コピー機がお手伝いします
みなさんは「パソコン」をどう思いますか?そんな素朴な問いを投げかけたテレビコマーシャルが、九五年にお茶の間をにぎわした。
「機械は嫌い」「僕には関係ありません」「マルチメディアって、何かうさんくさい」という無関心・否定派もいれば、「パソコンできない人って、これから滅びると思います」「結婚するんでしたら、パソコンができる方と決めております」というパソコン信仰派まで、実にさまざまな発言が飛び交った。
なかでも、次のセリフにドキリとし身につまされる思いをした人もいただろう。
「パソコンできないと就職できないんですか?私、就職したいんです」「パソコン買ってあげたら、この子出世しますか?」「IT会社に入って、生まれて初めて落ちこぼれになりそうなんです。
これまで順調だったのに……」景気が低迷の底を脱したとは言われているものの、それでも依然として不況のまっただ中にある。
これから社会人として旅立つはずの学生が就職できずにあえぎ、サラリーマンは残業手当のカットやリストラに恐れおののいている。
部下に命じてワープロ入力させていた課長や部長も、いまでは何から何まで白分でやらなければならなくなったという会社も多いだろう。
いままでは、モノを生産すればなんでも売れるという時代であった。
赤字部門があろうが、余剰人員がいようが、会社にとっては大した問題ではなかったのだ。
でもそれは過去の話。
いまでは、各社とも、いかにして「ヒト」と「カネ」をかけずに生産性を上げるかという課題に、真剣に取り組んでいる。
そして、その中で得た結論の一つが「パソコン」の活用である。
パソコンによって世の中がどのように変わっていくのか。
その驚異の実体について紐解いてみることにしよう。
まずは、パソコンとはどんな機械なのか、そこから出発することにしよう。
おそらく、パソコンをいままで一度も見たことがないという人は、まずいないと思う。
顧客に提示するための企画書や見積書、あるいは社内の議事録や報告書などをパソコンで作成し、これを用紙に印刷している社員の姿を幾度となく見ているはずだ。
あるいは、製造部門などの部署では、試作品の設計図をパソコンで描いたり、デザインしたりという光景を目にすることができるだろう。
経理部門ならば、入出金伝票や帳簿づけをパソコンで行っていると思う。
もちろん、会社以外の場所でも目にしているはずだ。
たとえば、街のパソコンショップに赴けば、展示品のパソコンでゲームに興じている若者の姿を見ることができる。
ところで、みなさんはそんな光景を見て不思議に思ったことがないだろうか。
「同じパソコンなのに、どうしてワープロや製図、デザイン、経理、さらにはゲームなど、いろいろなことができるのだろうか」と。
パソコンに疎い人ならば、「会社で見たのは、ワープロや経理しかできないパソコン。
街で見たのは、ゲームしかできないパソコン。
見かけは同じでも、それぞれ機械が違うから」と、さしずめ答えるかもしれない。
もし、あなたもそう思っていたとしたら、さっそくここで考えを改めてほしい。
パソコンは、一つの目的にしか使えないような単純な機械ではない。
会社のパソコンが、仮にワープロにしか使われていなかったとしても、実際には他のことだってできるのだ。
製図やデザインだろうが、経理だろうが、もちろんゲームだって楽しめる。
機械が違うというのは、まったくの嘘。
いろいろなことができる万能マシン、それがパソコンだ。
なぜそんなことができるのかについては、次の章で詳しく説明するが、とりあえずはソフトという言葉だけでも、ここでしっかりと覚えておこう。
パソコンを万能マシンにしているのがソフトだからだ。
私たちは、ビデオデッキにビデオソフトを差し込めば、その映像をテレビで観ることができる。
悲しい気分に浸りたければ、悲劇の恋愛映画のビデオソフトを入れればよいし、怖い気分を味わいたければ恐怖映画にすればよい。
ビデオデッキに入れるソフトによって、テレビに映る映像は違ってくる。
パソコンの場合も何を入れるかによって、その用途がガラリと変わる。
パソコンでワープロがしたければ、ワープロができるようになるためのソフト(これをワープロソフトという)を入れればよいし、ゲームで遊びたければ、それができるソフト(これをゲームソフトという)を入れればよい。
入れるソフトによって、パソコンはいろいろなことができるようになるのだ。
パソコン(Personal computer)ソフトによって変化する変幻自在な道具。
正式名称はパーソナルコンピュータ。
頭文字をとって、PCともいう。
ソフト(Software)これによってパソコンの用途が変わる。
正式名称はソフトウェア。
ワープロソフトやゲームソフトなど、いろいろな種類がある。
ソフトによって、いろいろなことができる万能な道具=パソコン。
確かにパソコンは便利なように思える。
でも、それがどうして会社の経営を立て直す武器になるのだろうか。
なぜ不況にあえぎ苦しんでいるはずの企業が、相次いでパソコンに莫大な投資をしているのだろうか。
この理由を知るには、いまの日本経済が直面している問題と、企業がこれから目指そうとしている経営スタイルについて知る必要があるだろう。
バブル経済の崩壊後、企業は経営の立て直しと見直しに迫られた。
いわゆる、減量経営と従業員の首切りというリストラだ。
リストラの波は、中小企業はもちろんのこと、大手の大企業さえも覆い尽くした。
日経新聞の紙面に「大手○○社が従業員××名を削減」といった記事が毎日のように掲載されるのを見て、「明日は我が身」とおびえた人も多いだろう。
だが、リストラは企業経営立て直しの抜本的な解決策には至らない。
なぜなら、赤字事業の撤退や人員の削減だけでは、単に会社の支出を減らしているにすぎないからだ。
リストラによって、製品が二倍売れるようになった、という話は聞いたことがない。
そこで、もう一歩踏み込んだ変革が必要になったのである。
それがBPR(ビーピーアール)、俗にいうエンジニアリングだ。
そして、折しも米国では、企業がBPRを導入することによって、経営の立て直しに成功する例が急速に増え始めたのである。
BPR(BusinessProcessRe-Engineering)は、読んで字の如く、仕事の流れを再構築するための経営手法だ。
企業の経営プロセスを根本的に考え直し、抜本的に改善することで、企業のアクティビティを飛躍的に向上させるのがBPRだ。
その結果として、製品のコストや品質、顧客へのサービスなどについて劇的な改革をもたらしてくれるのである。
BPRを社内に導入するには、経営者の「鶴の一声」で全社的に推進すること、顧客の観点に立って改革すること、パソコンなどの情報技術を最大限に活用すること、の三つの要素が必要になる。
そして、これを成功させるには、いままでの経営スタイルを根底から覆す必要があるのだ。
米国のように、実力があれば若手でも重役になれるようなオープンな企業体質とは違い、日本のように組合とか年功序列のような保守的な社風を持ったスタイルは、BPRの導入に際して大きな障壁となってしまう。
つまり、成功させるのが難しいのだ。
そのため、日本では、BPR実現のための手段であった「情報技術を最大限に活用する」という点が、いつの間にかBPRよりもクローズアップされてしまった感がある。
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